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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
どうやらやっとそのお産のゴタゴタもすみ咲枝の体も順調で全く一安心です。泰子が生きると決ってから私は全く体中の力みをゆるめて夏以来始めてクタクタになり十三四時間も眠ります。相当なものでしょう。うちの人達も私に無理をさせていたことが必要がすんでみればはっきりわかってきて今は休むことを頼まれ私はいい身分よ。何しろ呑気にしてさえいれば安心だというのですからね。
今の調子で春までのんびりしたら眼もよほどいいでしょう。伊東へ行くことなども考えていたけれどもあすこは防空地帯の甲で、これからは東から西への気流がよくなる折からだし、地方の常識外れも怖ろしいし、やっぱり信州辺の温泉へでも行けるまではこの二階でずくんでいようと思います。軽挙妄動は怖るべしですから。
薬のことを有難う、でもねオリザビトンは買ってあるだけは飲んでいただきたいと思います。効く薬なら尚のこと、何しろ、そちらの食事は手にとるようにわかっているのですし。こちらはメタボリンとレバーとでいいと思います。薬はこの程度で充分な休みと一日の間の適当な用事の配分とできっといいでしょう。片附け熱病がすっかり消えてこの頃はどうやら何時もの百合ちゃんの緩慢状態になりました。