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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

しかし更に一つ我田引水をすれば、私たちの常識は広くて邪魔なことは決してなく、昨今の作家たちの広地域での活動ぶりを見ると、寧ろ常識の弱困になやむようです。多くの人は、その国の人々のもちものを、より科学的に説明してやるにつれて日本の独特性をも納得させてゆく、というような方法には全くかけているのね。肥った人という感じをくっきりさせるには、傍に瘠せた人を示すのが上分別という文化上の方法。最も自然な方法さえ手に入れていません。啓蒙される側では自分に馴染ふかいよりどころがなく来るからのみこめず感受が自然にゆきますまい。そういうことについても感じるところが多くあります。導きては導かれるものよりも常に勤勉であるべきです。

――○――

安積から寿江、ひき上げて来ました。二十何日かいたのですが、身が小堅く肉づいて元気そうになりましたけれど、本気で二時間勉強すると夜眠れない由です。病人はやはり病人を中心とする生活を組立てないと無理なのね。病人同士かたまるというのでなく、丈夫な人間が引添って病人を中心に段々健康環に近づけてゆくという仕事を中心にした生活が必要なのでしょうが、うちでは、迚も不可能です。