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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

みんなは、生れかわって一つの人にしては発育が良いとほめて、お杯をあげてくれました。その杯のひとくみの中の一つが、私達御秘蔵の真丸のもので、そのつれの杯をあげながら、私は、あのまん丸の杯が、矢張りキラキラ光りながら私のために上げられているのを感じました。

お杯と云えば、さもお酒を飲んだようで、心配なさるといけないけれど、それは、全くお祝の心と色彩効果のためで、アアチャンもいぶし鮭の切身や、あやしげな数ノ子位しかないテーブルの上を、せめて賑わすためには、色だけでも鮮かな緑の液体を持出したわけです。

この晩は幸せに暖かくて、火無しの部屋も今日のようには寒くなかったから、みんなものんびり寛いで、太郎が張り切って四角い口を開いて軍艦遊びの新型を説明するのをききました。

思いがけない友達が、ちゃんと私の誕生日を覚えていて、私の世話で『シャロット・ブロンテ伝』が出版されたお礼だと云って、わざわざ贈物を持って午後に来てくれたりしました。こんなに良い誕生日を祝ってもらうには、並大抵なことではなくて、矢っ張り、一ぺん死んだだけのことはあると、みんなが笑いました。そうしたらね、太郎はよほど感ずる処があったとみえて、次の日みんなの居るとき、真面目くさって「アッコオバチャン、今年の夏も病気するといいね、みんなが水瓜を持って来てくれる