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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
住むのは横浜の郊外の由です。
十月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
十月二十四日
灯のついたところでお目にかかったりすると、何だか夜じゅうそこにいるような珍しいおもしろい心持がします。日が短くなったのね。あの日来信一束うけとりました。バルザックもありがとう。何年来かたまった手紙はかなりでした。それに封筒の紙がよいものだから新しいようにピンとしていて、今時見るとどこかよその国から来ているように印象が新鮮です。包みからはみ出した一つを待っている間によみかえしました。偶然達ちゃんの御結婚の日のことを野原から書いたものでした。妙なもので、時を経た手紙は自分で書いたものながら、やはり専門家らしく客観でよみかえしますね、そして、あんまり上々の手紙でもないナと思うのよ。こまかく書いているけれども気がせわしいところがあって。
一行一行をゆっくり辿ってみると、それがわかります、ですからきっとあなたもそれはお感じになっているのでしょうね。たのしんで書いてはいるのだけれども、いかにも迅い文字の運びで。
でも、あなたはちっともそのことについては苦情を云わず何年も辛棒して下さいました。