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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
だからもしかしたら手紙を私はよほど大切に思って書いてよいのかもしれないわ、心持の上での大切さと同じくらい文学上の大切さを自覚して。しかし、そんなこと忘れて書くところ書いているところに手紙のよさはあるのでもあります、只今唯一の願いはせっかちでない手紙をかくということよ。仕事に自分を馴らすために、ワアーッと勢にまかせて一度に何枚もかいてしまわず、念を入れて二日にわけてかいてみようかなどと。手紙には大抵三時間以上費します、一日分の制作として十分よ、もし緻細にかいてゆけば。
お医者の意見で、私がすこし平常の仕事に耐えるようになるのは来年の夏ごろとのことです。一人前の外出、一人前の仕事の意味で。呂律もちゃんといくらかよくなって。しかしそれまであんけらかんとしていたくないから私は生活をよく整理して、一番つかれる外出とか来客とかはこれからも最少限にして仕事をすこしずつなりともしたいと思って居ります。
風邪大したことにおなりなさらないようにね、国もきのう、きょうはドテラ着てフラフラです。私のグリップというのは菌が血液に入って淋巴腺がはれて困ったのでした。
グリップというのは、二度ほどやったからお医者さんが一こと云ってくれれば注意したのに。