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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

ね。どんなにそういう評論をよみたいでしょう。「三人の巨匠」はややその渇をみたします。よみたい欲が自分に幼稚なものも書かせました。が、私はもう小説に限ります。あらゆる私の作家としての問題、宿題、予測をすべてあなたに訴えることにきめました。私は小説のことがこの頃又すこし分り、評論のことも又すこし分って来て、制作として二途を追いにくいことが明瞭となりました。或る成長の後二つは却って兼ねにくいもののようです。どちらもそれぞれ全力を求めます。二つの神に仕えられないと昔からいうのはうそでない。

私は自分の中の評論家にいくらか手引きされつつ刻苦して自身が呈出している課題を克服して行ってみたいと思います。我々の世紀、私たちの時代、限界のなかで、文学の資質はどの位まで更新し得るものであるか、そのすべての条件を試みてみとうございます。私に小説のことがすこし分って来たというのはまやかしではないでしょう? こうして、私は自分の問題から段々ぬけ出して、日本における一定の世紀の文学的資質というものへの答えを捧げたいと思うのですから。これは何と謙遜な、若々しい、願望そのものにおいて生新な希望でしょう。