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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

働いたことのない人々の人生とは何と嵩ばっているのでしょうね。

五月十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

五月十五日

十日づけのお手紙十三日(木)頂きました。くたびれて、クタクタになってかえって来てお茶を呑もうとしてサイドボードのところを見たら、ちゃんとたてかけてありました。思わずこれはいい、これはいい、と申しました。いつもかえって来るときはペンさんの腕に半分ぶら下りよ。そしてお茶をのみパンをがつがつとたべて、二階へ上り坐布団の上に毛布をかけてゴロリとして夕飯までうとうととします。そうするとすっかり元気になります。気は楽なのにちゃんと何時間か坐って居るというだけでも、やはり疲れるのね。おっしゃるとおり自分の気持だけで区切りをつけていたってはじまらないわけですから、もし七月につづけばはっきり夏休みにします、九月下旬までは。体の調子は決してわるくないと思います。それに目下は一寸人手もあり、従って寿江子のとばっちりもおさまっていて。私はこの頃バカになっている修業というものが必要で、成程と感服いたします。そんなにシブキ上げるなら放っておいて私にさせればいいのに、それは可哀想、させる人たちがひどいという公憤も加って、寿は自分でひきうけて、馴れないから大鳴動を起すのね、親切のうけかたもむずかしいものと