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げんかいなだみっこう
玄海灘密航
金 史良
「文芸首都」1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,605 字 · 6 页
思い焦っていた。何しろ若い年先であり、それに丁度中学からも追い出されたばかりなので、ゆっくりと形勢を見るとか智慧をめぐらすとかいうようなことは出来なかった。玄海灘の彼方というのは、私にはその幾日間かは全く天国のようにさえ思われていたのであろうか。
或る日も私は埠頭で、帆船や小汽船が波頭ににょきにょきと揺れている様を見ながら、じっと立っていた。それはみぞれの降る日だった。その時黒い縁の眼鏡をかけた内地人の男が、通りがかりに独言のように、海を渡りたければ明朝三時に××山の麓に来たらいいと云うのである。私は驚いて振り返って見た。だが男は吹き荒ぶみぞれの中に、どこかへ消え失せてしまった。さすがに私はその晩いろいろと苦しみ悶えたものである。丁度二三日前から、宿屋のボーイにも三十円程出せば密航させるからとしきりに誘われていた訳なので、よっぽど思い切ってやってみようかと考えた。だが何故となくおっかなかった。隣りの部屋に一人の客がやって来たが、言葉がどうも郷里の北朝鮮系である。私はその夜中に客の寝ている部屋へはいって行った。そして密航に対して意見を求めた。すると客はしげしげと私の顔を眺めてから、