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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

「マニ妙光、マニ妙光」

おそれおののいて、祈りはじめた。

「コウーラッ!」

正宗菊松の眼はランランとかゞやき、髪はみだれ、神の怒りが乗りうつったように、はげしくジダンダふむ。

すると白衣の男が、

「ヒッ、ヒッ、ヒッ」

と呻きをたてゝ、足をバタバタふり、七転八倒、廊下をころがって、泣きだしたからサルトルもおどろいた。

「コウーラッ! キサマの魂をぬいたぞウ」

どうやら、たしかに魂をぬきあげたらしい。そういう手ぶりである。そして、ぬきあげた魂を、ためつすかしつ、見きわめている様子である。

「ベエーッ」

正宗菊松はとびのいて、ツバをはいた。そして魂を投りだしてしまった。

「キサマの魂は腐っとる。ウジムシがたかっとるぞ。ベッ、ベッ。臭いのなんの」

よほど悪臭の強い魂らしい。正宗神様、イマイマしがって、鼻口をゆがめて、目をつぶっている。

魂を投げすてられたから、白衣の男の苦しむのなんの。

「アッ、アッ、アッ」

焦熱地獄の苦しみ。エビのようにヒン曲ったり、逆立ちして宙返りをうったり、脇腹をかきむしる。魂というものは脇腹にあるのかも知れない。

ずいぶん意地の悪い神様で、のたうち廻って苦悶しているのに、鼻をまげて臭がっているばかり、一向に魂を返してくれないのである。