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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

近藤ツル子、イヤ、正宗ツル子二十一歳は器用な手附で、味の素を天草物産の袋につめかえて、それでツメカエの仕事が万事終了すると、アーすんだ、と背延びをしてから、正宗菊松をジッと見て、

「私、ツル子よ。どうぞ、よろしく」

平山ノブ子はセッセと荷仕度にかゝっていて、紹介をうけても、ちょッと上眼をあげたゞけ、挨拶ぬきに多忙である。我々日本人は戦争このかた汽車の切符売場などで女の売子にケンツクをくわされるのは馴れているが、紹介されてもジロリと上眼をあげただけとは、人格を傷けること甚しい。

けれども正宗菊松は、立腹を忘れて妙技に酔った。ツル子やノブ子の働きざまのカイガイシサに酔ったのである。ビジネス・オンリーとは、このことだろう。ビジネスに徹した哲人の構えがあるから、ほかのことにはアクセクしない様子である。だからパンパンが、自分のビジネスとなれば、チョイト、遊バナイ、抱きついたり、タックルしたり、そういうことも出来るのだろう。ビジネス以外のことにはアクセク気を廻さないようであった。

白河半平も手をかして、セッセと荷造りに余念がない。三人ながら仕事に精をうちこんでいる。