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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

これから出かけますと、いくらか暗くなりますが、これも宿命、ツユいといは致しません。では、さッそく出発いたすことにしましょう」

サルトルは全然ニコヤカで、百貨店の販売員のように愛想がよいばかり。

さッそく一同は立ち上る。ツル子は半平に向って、

「私は?」

「そうだなあ。紅一点まじる方が風流で、サルトル君も安心なさるでしょうね」

サルトルは半平を制して、

「イヤ、イヤ。夕闇の山林中の秘密の取引に、可憐なお嬢さんをおつれ致すのは、かえって風流ではありません。お嬢さんは箱根の旅館で待っていただくことに致しましょう」

「じゃア、ツルちゃんは、ここで待ってるのがいゝや。箱根まで行くこと、あるもんか」

才蔵が、むくれて、口を入れる。

半平は高笑い。

「雲さんはツルちゃんのこととなるとムキになるねえ。ムリな取引をお願いしているのだから、サルトル君の言葉には従わなければならないよ」

外へでると、サルトルは一同に向い、

「では、皆さんは私の車で、御案内します。お嬢さんは、皆さん方のお車で、タチバナ屋へ」

サルトルの言葉通りに、別れて車にのる。半平はツル子を車中へ送りこんで、

「心配することはないよ。