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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

「フン。なかなか、やるな。だが、畜生」

正宗菊松は胴ぶるいをした。

「修業、修業。負けないぞ」

彼は心に呟いた。

「事に際して、一々が、修業のタネ。チンピラ共がおごりたかぶっているうちに、修業を重ねて、乗りこしてみせる。今に、真価を見せてやるぞ」

修業、修業か。五十の手習いとは悲しいが、当人必死に思いこんでいるのだから、悲愴をきわめている。けれども、重役然と落ちつき払って、自動車にのりこんだ。どうやら自分の力でなしに、半平の気合いによって、重役然と持ちこたえているところが、危ッかしい。

こうして、一行は箱根底倉の明暗荘へ落ちつく。ここには昨日のうちに業務部の若い男が先着して、部屋も用意し、白米一俵と清酒一樽を取り揃えて待っていた。半平が正宗菊松にささやいた。

「あの男が雲隠才蔵さ。わが社名題のヤミの天才なんだよ。アイツが一人居りゃ、米だって酒だって自由自在さ。ボクたち寝ころんでいるうちに、みんな手筈をとゝのえてくれるよ。然し、今日は、やっぱりキミの秘書の一人だからね」

やっぱり二十四五のチンピラであった。見たところニコニコと、能なしの坊ッちゃんみたいな顔である。