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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

それでも彼はこの質問をきき忘れるわけには行かない。胴ぶるいをグッと抑えて、必死の構え。彼が大学生というものに必死の闘争意識をいだいたのは、この日をもってハジマリとする。

「失礼ですが、社長さんは、天草商事の中の天草書房の社長ですか」

彼が胴ぶるいをグッと抑えていることなどには、青年は問題を感じぬらしく、いつも涼しく、にこやかであった。

「いゝえ、天草商事全体の社長なんですよ。天草次郎とおっしゃいます。ですけど、編輯長のボクと、業務部長の織田光秀は書房の方の専属ですよ。もともと、今もとめている会計係も、書房の方でいるんですがね」

と、彼はもう、正宗菊松の返答もきかないうちに、入社したものと決めたらしく、名刺を一枚わたした。高級美談雑誌「寝室」編輯長、白河半平、と刷ってある。

「ボク、白河半平、かいてあるでしょう。ボクのオヤジ、面倒くさくなっちゃったんだね、子供の名前を考えるのがね。その気持は、わかるね。お酒に酔っ払った勢いで、シャレのめしたんですよ。知らぬ顔の半兵衛とね。だから、覚え易いでしょう。ほらね、知らぬ顔の半兵衛の白河半平、アッハッハ」

ひとりで、喜んで、笑っている。