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げんだいにほんのしそうたいりつ
現代日本の思想対立
戸坂 潤
「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页
前にいったように、「日本国民精神」即「国防」精神なのだから、この国防精神を多少でも堕落させる平和論は、およそ反日本国民精神的な存在でなくてはならぬ。これは海軍側から苦情が出たのが一応無難におさまった。さらに京大医学部の教授会が、太田武夫氏の「人類癌の細胞学的研究」という学位論文を通過させたのを、文部省は学位を認可しようとしないという、新例を開いたという事件がある。理由は、氏が左翼文化団体に関係したことがあるから、その思想、人物の関係上、博士にすることは、出来ぬというのである。
これで見ると少なくとも医学博士という学位は、その人間の学問よりも人格により以上の関係があるらしい。昔の支那の医者は顔立が尤もらしくて手蹟が優れていれば重んぜられたそうだが、学者や技術家に大事なものは、学問や技術よりも矢張り人格だということが好く判る。これは文部省が早く気がついて、学位を認可しなかったから、不幸中の幸とすべきだろう。全く油断のならぬ世の中だ。医学などにも国民精神に反した医学が出て来る。
でどうしても言論については特別の「保護」が必要だということになるのである。