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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

とにかく一方において総予算額に限度があり、他方において軍事費は絶対的(?)なのだ。「産業費」はまだしもとして、「災害費」などは単にこの二つの極の間の板ばさみにしかならぬ。――しかし軍事費はいうまでもなく侵略用のものではなくて国防上のものだが、少なくとも国民の生命の保証を外にしては国防の意義はあるまい。そう考えて見れば、「災害費」こそ最も即効のある国防費ではないのか。

矯風会の久布白女史は、岩手県の「壮丁」の体格が三十三年度に全国で五番から三十四位に転落したのは、大正二年の凶作の影響であるとして、今年(三十四年)の凶作の結果が二十年後の「壮丁」の身体に悪影響を現わすだろうことを、軍国のために悲しんでいるが、なにもそう無理に軍事的にコジつけなくても、国民の肉体が食って生きて行けないこと自身が、国防の目的の正反対現象なのである。

いずれにしても、膨大な軍事予算はブルジョア政党辺から非常に評判が悪いらしい。蔵相無能というところへ大抵持って行くらしいが、無論これは面あてで、女中が猫をしかるような意味だ。――ところが軍部にいわせると軍事予算の膨大に対する非難は、単に軍事予算というものの楯の一面をしか見ないところから結果するもので、決してそんなに財政上のただのマイナスではないというのである。