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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

ファッショ哲学式なデマゴギーは、社会的興行としては三六年度で全く影をひそめた。大衆の思想はこの点については極めて批判的にさえなって来た。だがそれにも拘らず日本型ファッショ的イデオロギーは国民の身辺にいつとなく薫染しつつあることを見逃してはならぬ。これに就いては後に見よう。ところが之に対して、マルクス主義も亦著しく日常化して民衆の常識となりつつあることを知らねばならぬ。少なくとも一頃流行った不安や虚無のポーズは、二月の事件によってそのポーズ自身がけし飛ばされて了った。文芸家もこの事件によって社会的関心をかきたてられた。文学の思想性(例、三木清、戸坂潤など)や作家其の他の教養(長谷川如是閑、谷川徹三)などの問題が持ち出された所以である。又青年論(室伏、三木、岡、大森、森戸、戸坂など)や恋愛論(岡邦雄、杉山平助、神近市子など)も亦、そこから発生した。だが特に後者は、まだ社会科学的分析にまで及んでいなかった。

三六年度に於ける単純な意味での思想界の動きで最も目に立つものは第一に、ヒューマニズムだろう。ヒューマニズムは三木清等がしばらく前から提唱していたものであるが、三六年に入って急に普及した。