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たまつきばのいちぐう

球突場の一隅

豊島 与志雄

「新小説」1916(大正5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,111 字 · 29 页

青空文庫

「ああいってみようよ。」

「実は……、」と云いかけて村上は相手の顔を覗き込むようにした。「僕はちとあの家には不愉快なことがあるんだ。」

「どうしたんだ。」

「なに昨夜ね、一人で出かけちゃったんだ。十一時頃までついたがね。おしまいには僕一人になってしまったんだ。林もやって来ないしね。するとおたかがね、お対手がなくて淋しいでしょうと云って、変に皮肉な笑い方をしたんだ。……一体君はおたかと林とをどう思ってる?」

「どうって何が?」と松井はどう返事をしていいか迷った。

「先からあやしいんだ。君だってそれ位のことは分ってるだろう。あのお上がいいようにしたんだね。……そこで、あそうそう、おたかが僕にお淋しいでしょうと云ったから、僕も少しふざけて林のことでおたかを散々ひやかしてやったのさ。」

「へえ!」

「なに奴さん洒々たるもんだ。所がね、側に居たお上が少し意地悪く出て来たんだ。村上さんも嫉妬やくほど御不自由でもないでしょうへへへと笑いやがるんだ。そしておたかと見合っては皮肉な笑を洩らすんだ。随分癪に障っちゃったよ。」

「それでやり込められたわけだね。」

「なにあべこべにやり込めてはやったんだがね。