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たまつきばのいちぐう
球突場の一隅
豊島 与志雄
「新小説」1916(大正5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,111 字 · 29 页
」と云って村上は笑った、「その方が面白いじゃないか。」
「どうだか。」
「だって君はおたかが好きだろう。好きだと云い給えな。」
「嫌いじゃないよ。……君はどうだ。」
「僕だって嫌いじゃないさ。が好きでもないね。」
二人はまた酒をのんだ。
「ねえ君、」と云って村上はすぐ松井の顔の前に自分の顔を持って来た。「おたかが僕達二人のものだったら、君は僕と決闘でもやるだろうかね。」
松井は黙って村上の眼を見返した。
二人は露わに互の眼を見合った。一瞬間其処には何の愧じらいもなかった。互に裸体のまま相手の凝視の前に立っていた。
松井ははっとした。それが何かということがちらと心に閃めいたのである。彼は拳を固めた。そしてつと顔を引いたと同時に村上も顔をひいた。
「え!」と喫驚したような声を松井は出した。
「さあ飲もうよ。」と村上が云った。
二人はまた少し酒を飲んだ。然し二人の間には軽い敵愾心があった。妙に他処々々しい視線を互の上に投げた。
二人が其処を出たのは九時すぎであった。二人共大分酔っていた。熱い頬に冷たい空気が流れた。街路の灯がいつもより赤いように彼等の眼に映じた。
「球を突いてゆくのか。