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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

「新青年」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页

青空文庫

火元は確に台所らしく、放火の跡と思われる様な変った品物は一つも見当らなかった。

「どうです、やはり砂糖が焦げていますね」松本の示したものは、大きな硝子製の壷の上部がとれた底ばかしのもので、底には黒い色をした板状のものが、コビリついていた。私は内心にあの青木の叫び声を聞いて駆けつけた時、「砂糖が焦げたのだなあ」と独言を云ったのを、ちゃんと聞いていたこの青年の機敏さに、驚きながら、壷の中のものは砂糖の焦げたのに相違ない事を肯定する外はなかった。

彼はあたりを綿密に調べ出した。その中に、ポケットから刷毛を出して、手帳を裂いた紙の上へ何か床の上から掃き寄せていたが、大事そうにそれを取上げて私に示した。それは紙の上をコロ/\ころがっている数個の白い小さな玉であった。

「水銀ですね」私は云った。

「そうです。多分この中に入っていたのでしょう」彼はそう答えながら、直径二分位の硝子の管の破片を見せた。

「寒暖計がこわれたのじゃないのですか」私は彼にある優越を感じながら云った。「それとも火の出たのと何か関係があるのですか?」

「寒暖計位で、こんなに水銀は残りませんよ」彼は答えた。