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びわでん

琵琶伝

泉 鏡花

「国民之友」1896(明治29)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,081 字 · 24 页

青空文庫

「可うございます。何とでもいたしてきっと逢って参りましょう。」

謂われて叔母は振仰向き、さも嬉しげに見えたるが、謙三郎の顔の色の尋常ならざるを危みて、

「お前、可いのかい。何ともありゃしないかね。」

「いや、お憂慮には及びません。」

といと淋しげに微笑みぬ。

三

「奥様、どこへござらっしゃる。」

と不意に背後より呼留められ、人は知らずと忍び出でて、今しもようやく戸口に到れる、お通はハッと吐胸をつきぬ。

されども渠は聞かざる真似して、手早く鎖を外さんとなしける時、手燭片手に駈出でて、むずと帯際を引捉え、掴戻せる老人あり。

頭髪あたかも銀のごとく、額兀げて、髯まだらに、いと厳めしき面構の一癖あるべく見えけるが、のぶとき声にてお通を呵り、「夜夜中あてこともねえ駄目なこッた、断念さっせい。三原伝内が眼張ってれば、びくともさせるこっちゃあねえ。眼を眩まそうとってそりゃ駄目だ。何の戸外へ出すものか。こっちへござれ。ええ、こっちござれと謂うに。」

お通は屹と振返り、

「お放し、私がちょっと戸外へ出ようとするのを、何のお前がお構いでない、お放しよ、ええ! お放してば。