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せいあらば

生あらば

豊島 与志雄

「文章世界」1917(大正6)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,046 字 · 47 页

青空文庫

あの病気の本当の恢復原因はいつも、日光と空気と滋養物との自然要素に止まるんだ。」

「また例の論法だね。」

「そしてそれが事実なんだ。……然し用心しないと伝染するよ。」

「伝染したっていいさ。」

川部は一寸壮助の方を顧みた。

「そうか、その決心なら大丈夫だ。そして大いに彼女を愛するがいいんだ。いや愛しなけりゃいけない。もしそれが君の心の必然のそして後悔のない向き方なら、それを生かすことが君自身を生かす道なんだから。」

壮助は何とも答えなかった。

「一体吾々日本人の生活には実感が欠けていていけないんだ。実感に生きることは猶更欠けているんだ。いつも作り物の衣の中に自分を囚えている。そしてその衣にばかり執着している。中は空だ。どうすることも出来ない穴があいているんだ。その穴を填す道は只裸になるより外の方法はない。裸になればいやでも自分のうちのことが眼について来る、そして其処に眠っている実感が自由な呼吸をするんだ。」

「君の云うことは分っているが、妙な云い方だね。」

「何が妙なもんか。……例えば、直接のいい比喩が在る。太古の半裸体時代の人間を考えてみ給え。記録が教える所に依れば、また吾々が想像し得る所に依れば、彼等の身体には力が満ち充ちていた。