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せいあらば
生あらば
豊島 与志雄
「文章世界」1917(大正6)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,046 字 · 47 页
」
壮助はじっと自分の心を押えて、頤をつき出しながら友の顔を見守った。
「いや、実は君が心配してるだろうと思ってやって来たんだ。」
「で?」
「金は出来そうだ。僕が今とりかかっている翻訳の原稿料を本屋から前借しようと思って今日行って来た。主任の者が居ないから確かな所は分らないが、多分出来るだろう。」
そう云って川部は眼を伏せて何やら考え込んだ。
「…………」
壮助は言葉では何にも云えなかった。急にぱっと明るい所に出たような気がした。それは一歩前にふみ出されたのであった。凡てのことが顧みられて、はっきり分って来た。
「三百五十円と云ったね。」
「ああ。」
「高利貸の方は一体いくらになっているんだい。」
「借りたのは二百円だが、何やかやで三百円近くになっている。それに此処のお婆さんに返すのと、光子の家へも少しは助けたいから。」
「では兎に角三百五十円だけ拵えよう。金なんか、場合に依ってはどうにもならないものだが、またどうにもならない所に融通もきくものだ。……僕が高利貸のうちへ行ってやろう。まけさしてやるんだ。云われるままに取られる奴があるものか。大丈夫だ。そして僕には或る興味もあるんだ。