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いきたにんぎょう
生きた人形
小川 未明
「サンデー毎日 7巻49号」1928(昭和3)年10月28日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,925 字 · 10 页
知った人でもおありなさるのかね。」と、たずねました。
少女は、おばあさんなので安心して、つい自分の身の上を語ったのです。
「いいえ、私は、まったく一人ぽっちなのでございます。お母さんと二人で、家にいましたときは、どんなに幸福でしたか……。お母さんは、私をかわいがってくださいました。お父さんのお顔を知りません。ごく私の小さいときになくなられたんですもの。そして、兄さんがありましたけれど、私の六つのときに、家出をして、そののちたよりがないので、かわいそうなお母さんは、死ぬまで、兄さんは、どこにどうしているだろうといっていなされました……。」
おばあさんは、少女の話を月の下で、すこしも聞きもらすまいと耳を傾けていました。
「それで、おまえさんは、家なしになってしまったのですかい。」と、おばあさんはいった。
「家なしに?」
少女は、なんというさびしい言葉だろう? こういわれると、胸がふさがるように悲しかったのでした。なるほど、考えれば、もうどこにも自分の帰る家はない。ただこのうえは、ひとりの兄をどうしてもさがさなければならぬという、日ごろの願いに、気がひきたったのです。