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いきたにんぎょう
生きた人形
小川 未明
「サンデー毎日 7巻49号」1928(昭和3)年10月28日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,925 字 · 10 页
呉服店の主人というのは、気軽なおもしろい人でした。少女は、自分の身の上を打ちあけて話したのは、おばあさんと主人の二人ぎりでしたが、主人はどうかして、兄さんにあわしてやりたいと、蔭ながら心配していましたので、新聞記者に話したものとみえて、このことが土地の新聞に載りました。すると、生きた人形の身の上話が、たちまち町の中にひろまったのでした。
ちょうど、その日のことであります。青年が、呉服店へたずねてきました。
「私が、兄です。」といって、少女に面会を求めました。けれど、彼女は、子供の時分に別れたので、兄さんの顔をおぼえていません。
「ほんとうに、お兄さんでしょうか?」と、少女は、美しい目で、じっと青年を見つめていました。
「なにしろ十年もたったのだから、忘れてしまったのに無理はない。けれど、僕には、雪ちゃんの小さな時分のかわいらしい姿が、ありありと目に残っているよ。」と、青年はいって、
「僕も、覚悟をして家を出たのだから、りっぱな画家にならなければ、帰らないと思っていたのだ……。」と、語りました。そして、ふところから、お母さんの写真を出して、妹に見せたのであります。