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いきつつあるじいしき
生きつつある自意識
宮本 百合子
「関西学院新聞1948(昭和23)年5月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,327 字 · 9 页
デュガールは、第一次ヨーロッパ大戦を終ったあとのフランスで、ファシズムの文化侵略に対する広汎な人民戦線の結成されたフランスで、主人公ジャックの人間形成のモメントを以前の人々のようにただその人にとっては深い意味をもつ日々の身辺的小事件の累積にだけ見なかった。デュガールは、ジャックをとりかこむそれぞれの時期における社会的環境の特質とジャックの人間性の覚醒――自意識のめざめの段階とを対決させつつ、ジャックとその社会の動きを描いている。ジャックという一人の人間が、一定の社会史の期間をとおして、その矛盾、その悪、その痛苦につきころがされ、おき上り、また倒れつつ人間の理性を喪わず生きつつある姿として描かれている。ジャックとはちがった生きかたをする父や兄や他のチボー家の人々をも同時に描きつつ。
高等小学上級生、中学初級生が、予科練へ送りこまれて行ったあの列伍の姿を忘れることが出来ず、彼等をむざむざ殺した者たちのきょうの安泰について許すことが出来にくい。生命の否定・人格無視・人種間の偏見を根幹とした軍事権力の支配とその教育のもとで、どうして若い幾千・幾万のこころが、個々の人間の尊厳や自我と社会現実との関係をつかむことが出来よう。