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いきつつあるじいしき

生きつつある自意識

宮本 百合子

「関西学院新聞1948(昭和23)年5月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,327 字 · 9 页

青空文庫

日本では、一九四五年の八月からあとになって、やっと人間と社会の真実について話ができるようになった。民主的な日本への転換がいいはじめられ、ブルジョア民主主義という言葉が、半封建的日本という表現とともに、常用語のために生れた。軍国主義の餌じきとされて来ていた日本人民の人間性・知性が重圧をとりのぞかれてむら立つように声をあげはじめたとき、自我の確立とか自意識とかいうことが言われはじめたとき、そういう角度を手がかりとして自分の人生を見なおしはじめた若い人たちのうちで、何人が「チボー家の人々」をよんでいただろう。――言いかえれば、ヨーロッパにおける自我や自意識の課題が第一次第二次大戦を経た一九四五年までにはその社会的ファクターをどのようにまで発展させて来ているか、ということについて知る時間のあった人々が、どのくらいあっただろうという意味である。

日本の青春は云いようもなくむごたらしく扱われた、それこそ半封建社会の野蛮さそのものであった。今年二十歳をいくつか越したばかりの若い人々は、戦争末期には丁度中学上級生かそれより一つ二つ年かさであったにすぎない。それらの人々は云わばもう子供のころから軍歌をきかされて育った。