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せいたいのりゅうこう
生態の流行
宮本 百合子
「早稲田大学新聞」1940(昭和15)年5月29日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,586 字 · 6 页
学生は人間としての暖かい血をもって生きているものとして十分感じさせる題なのである。その意味でリアルな題であるとも云える。著者の社会的判断の志向の責任もおのずから含まれているのである。
「学生の生態」という題は、これに比べて濡れたガラスの面にさわるような感触を与える。外囲の或る条件のもとに自然物としての生物は変化する、その変化を客観的に観察する、生態学となそうというのであろう。――だが、人間はそして青年学生はほかの自然物としての生物にはない精神をもっており、感じる心をもっており、環境へ自分から働きかけてゆく力も欲望ももっている筈ではないのだろうか。それらの人間らしい力を認められての上で、その力のあらわれについて相互関係の間で語られなければならないのではないだろうか。今日、学生生活は外部的事情において一変して来ていると共に内面生活は外部にあらわれているよりもよりつよく動かされて来ている。その動かされかたは複雑で弱さも強さも人間らしさの骨頂でもたれていることを痛感しているのは学生自身ではないだろうか。それが現代の文化の波をどのようにうけ、どのようにかえしているかということは、植物にも動物にもない人間の切実な生活史の実質であることを、思っているのは作家ばかりではないだろう。