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せいたいのりゅうこう
生態の流行
宮本 百合子
「早稲田大学新聞」1940(昭和15)年5月29日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,586 字 · 6 页
急激な社会の推移ということもつまりは人間と人間との意欲の交渉の、複雑激甚迅速な動きである。その意味では昨今の地球の呻きは人間ぽさに咽せるばかりであるわけだが、文学が、人と人とのいきさつとして益々多彩にその姿をつかまず、却って生物的な面へ人間を単純化して、現代の禍福をも語ろうとする傾向を一方に生じていることは私たちを深く考えさせる点だと思う。
「結婚の生態」の中で語られているいい生活の規準は、テニス・コートもある洋風の家と丈夫で従順な妻と丈夫なほどよい数の子供達に基礎をおいているのだが、文学の本来は、そのような一個の男の欲求の肯定から出発した設計の描写ではなくて、現代の常識が何故そのような図取りで人間に生命の保存を考えさせるか、そのような考えかたに対して人間はどう判断し感じているか、という課題にこそテーマとして、ふれるべきである。
六月号の『中央公論』にのっている岩上順一氏の「運命の構造」という論文も今日の文学の上に現れている生態的傾向についての考察をのべている。文学に人間の人間らしいいきさつをとり戻さなければならないということは新な重要さで考えられなければならないと思う。