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せいかつしゃとしてのせいちょう
生活者としての成長
宮本 百合子
二葉亭四迷の悲劇にもふれて
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,603 字 · 12 页
或る種の人々はその緊張のために思考する力を喪って、より強烈な需要に自分の生活を吸収されつくしてしまう。経験が歴史の推進にとって重大な価値をもつのは十分な自覚と観察と判断と結論とが種々様々な思考と行動との間からまとめられて来るからであろう。そのとき一つの歴史が生きて経過され体と精神とによってためし験されるということが出来るし、人間として歴史に働きかけてゆく能動の力が生じるのである。
どんなに歴史が強烈に動いても、それは人間の動きから発するものであるということは明らかなのだし、そうとすれば、人間の義務はあらゆる場合に、歴史に消耗されっぱなさず、歴史に働きかける力としてめいめいが存在しなければならないことにあるのではないだろうか。そして、この歴史に働きかける力としての存在の姿に、いろいろ私たちを考えさせるものもあるわけである。
明治文学の歴史を少しでも知っているものは、二葉亭四迷という作家の名の価値を否定しないだろうと思う。二葉亭四迷は明治二十年に小説「浮雲」を書いて、当時硯友社派の戯作者気質のつよい日本文学に、驚異をもたらした人であった。硯友社の文学はその頃でも「洋装をした元禄小説」