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「せいかつ」たす「せんそう」たす「きょうぎ」わるぜろはのう

「生活」+「戦争」+「競技」÷0=能

癋見 鈍太郎

「喜多」1928(昭和3)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,266 字 · 7 页

青空文庫

極めてありふれた、道理至極した話なのだ。

まず吾々の日常生活を煎じ詰めると、そこに「能」が現われて来る。換言すれば、ある一つの仕事を熱心誠実にくり返していると、その心境なり、その動作なりが、イツ知らず純一崇高化して来て、自然と能の型の均整美に接近して来るのだ。

その中でも姿態の方から観察すると、労働者が習熟鍛練した業務の三昧に入っている時には、その体の構え、動作の位取り、心持ちの静かさまでが、「能そのまま」になっていることが珍しくない。老船頭が櫓柄につかまって沖合の一点を白眼みつつ、悠々と大浪を乗り切る、その押す手引く手や腰構えの姿態美は、ソックリそのまま名人の仕カタ開キであるまいか。その心境は恍惚として虚に憑り風に御する底の「能」の心境と一致しているのではあるまいか。又は鉄塊上の一点を狙って大ハンマーを繰返し繰返し振り下す青服の壮漢の、焦らず弛まぬ純誠純一な身心の活動美も、又ソックリそのまま能のソレに当てはめられはしまいか。

見たまえ! 物を運び、物を操り、作り、投げ、又は受取る……なぞいう稼働者の態度を。……台所で働く女中の身体のこなしまでも、しかもそれが練達洗練された三昧に入っている所作である限り……その心境がその仕事に対して純一無雑である限り……そこに能楽の型と同じ真実味の横溢した「人間美」