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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
庸介は、なんだか、自分が責められているような気がした。妹から、「あなたは何という不愛相な兄さんなんでしょう。妾になんかちっともかまってくれないのね。」とでも云われたような気がしたのであった。そこで彼は元気よく、
「どれ、僕が採って上げよう。ね。律子。」
こう云って立ち上った。
五
房子は、自分自身を不幸であるとは思えなかった。とは云え、自分のしているどの一つ一つについて考えてみても、またそれらをみんな集めた自分の生活全体というものを考えてみても、どうしても「これで良いのだ。」という確信を持つ事ができなかった。そうかと云って、それをどうすれば良いのだかほかに何を初めたらばよいのだかを知らなかった。それがために彼女は、どんな場合にでも何かしらある同じ欝憂に出遇わない訳にはゆかなかった。それはきわめて幽かなものには相違なかったが、彼女の心ではとても測り知り得られないほど広い、大きな、――云わば、何もかも、世界中のあらゆる物をそれで包んでいるのではないかとさえ思われるようなものであった。それを思うと、彼女はいつも妙に退屈を感じた。何をしている時でも、すぐにその事が退屈になり出して来るのであった。