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こうしゅうぐんないようかいじけんとりしらべほうこく
甲州郡内妖怪事件取り調べ報告
井上 円了
「東京朝日新聞」1894(明治27)年5月8、9、11、12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,934 字 · 18 页
なんぞ、これを奇といわん。もし、かの女子にして、自身のかつて知らざる数千里外の西洋諸国に起これる出来事を予言するがごときことあらば、それこそ実に奇怪千万なれども、わずかに自身の住める一村内の出来事を予言し察知するがごときは、いまだ奇と称するに足らざるなり。杉本氏の談話によるに、かつて歯痛にかかりしとき、怪声に向かいてその薬をたずねしに、落雷のために裂けたる木の一片を用うべしと答えたりという。これすこぶる奇なるがごとくにして、しかも実に奇なるにあらず。なんとなれば、かかる治法は、その辺りにおいて一般に伝承するところなればなり。指痛(腫物にて)をうれえしきこれが薬法をたずねしに、某の木と某の草とを調合して服用すべしと教えたり。されど、その草の名を明言せざりしをもって、再三これを問い返せども、さらに知れず。ここにおいて、あまねくその辺りに発生せる草を集め、いちいちこれを示して、これかかれかと問い試みしも、ついにその草を得ざりしことありたりという。こは、おそらく、かの女子がその草の名を忘れしによるものならん。
第三に、断機のことのごときもまた、決して奇とするに足らず。