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こうしゅうぐんないようかいじけんとりしらべほうこく
甲州郡内妖怪事件取り調べ報告
井上 円了
「東京朝日新聞」1894(明治27)年5月8、9、11、12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,934 字 · 18 页
なんとなれば、この出来事は必ずかの女子のおりしときに限ればなり。特に機を織りてありしとき、偶然その糸が断絶せしことのごときは、かの女子の織りてありし機にして、彼が「今、わが機にしかじかの怪事ありたり」と告げしによりて、はじめてその家人に知られしものなれば、これをかの女子の所為とせば、毫も怪しむべき点なきなり。ただこれが奇怪とせらるるは、その女子は決してかかる悪戯をなすものにあらずと信ぜられしによらずんばあらず。また、かの室内の一隅にかけてありし機糸が、なんの原因もなくして截断せられたることのごときも、その日はかの女子一人のみ家にありし日なれば、いずくんぞ、かの女子が家人の不在に乗じて、自らなせしところにあらざることを知らんや。
第四に、杉本氏の談話によれば、かの口笛のごとき怪声が他人の問いに応答するは、最初よりのことにあらず。最初の間はただその声を聞くのみなりしが、その後ようやく他人の問いを発するものあれば、わずかにこれに応ずるに至れり。されど、なお熟練の足らざる故にや、いまだ明らかに五音をいい分かつことあたわず、ただ、問いを発する人があらかじめ方法を定めおける応答の方法に従いて、これに応ずるに過ぎざりき。