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こうしゅうぐんないようかいじけんとりしらべほうこく

甲州郡内妖怪事件取り調べ報告

井上 円了

「東京朝日新聞」1894(明治27)年5月8、9、11、12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,934 字 · 18 页

青空文庫

ゆえに、予は種々の問いを提出してその答弁のいかんを注意せしに、その言語の順序、連絡の上において、さらに異常あるを認めざりき。よって、また視覚の上に種々の試験を施し、もって幻覚、妄覚の有無を考えしに、またさらにその徴候だに認めざりき。よって、予はある二、三の方法により、およそ十分間ばかり催眠術を施したれども、さらに感ぜざりき。これらの試験によれば、狐狸の類が憑付せりとの説は、全く無根の妄想なること明らかなり。

つぎに予は、かの口笛のごとき怪声がいずれの所より発するかを探らんため、これを聴かんことを求めしかど、予がほとんど三、四時の滞在中には、ついに聴くことを得ざりき。もっとも、その女子が予の休憩せし中村氏の家に来たりし前には、隣家において怪声あり、「今日はここより西の方へ行かじ」といえりとぞ。しかして、中村氏の家はまさしくその西に当たれば、ついに聴かれざりしものと見ゆ。かくて、その女子が予のもとより退き、再び隣家へ行きしとき、また怪声あり、「われは決して少女とともに隣家へ行かざりき。隣家の客もしこの家に来たらば、われはただちにこの家を辞して他家に至らん」