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こうしゅうちんぶたい
甲州鎮撫隊
国枝 史郎
「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 页
……ただ私だけが、臆病だったので……」
「これ迄に、二百人もお斬りになったというお噂のある貴郎様が臆病……」
「いや、女にかけてはじゃ。人を斬る段になると私は強い!」
と、総司は、グッと肩を聳かした。痩せている肩ではあったが、聳かすと、さすがに殺気が迸った。
お力はヒヤリとしたようであったが、
「お千代さんという娘さんが、その一人の女の方なのでしょうね」
「左様」
と迂闊り云ったが、総司は、周章てて
「いや……」
「いや?」
「矢っ張り左様じゃ」
「よっぽど可い娘さんだったんでございましょうね」
「うん」
と、ここでも迂闊り正直に云い、又、周章てて取消そうとしたが、自棄のように大胆になり、
「初心で、情が濃やかで……」
「神様のようで……」
「うん。……いや……それ程でもないが……親切で……」
「そのお方、只今は?」
「切れて了った!」
こう云った総司の声は、本当に咽んでいた。
「切れて……まあ……でも……」
「近藤殿の命でのう」
「何時?」
「江戸への帰途。……紀州沖で……富士山艦で、書面に認め……」
「左様ならって……」
「うん」
「可哀そうに」
「大丈夫たる者が、一婦人の色香に迷ったでは、将来、大事を誤ると、近藤殿に云われたので」