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おとこぎらい

男ぎらい

豊島 与志雄

「苦楽」1949(昭和24)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,878 字 · 18 页

青空文庫

悲鳴をあげ、涙ぐんで、手当り次第に引っぱたきました。

「どうした。あんまり騒ぐんじゃねえよ。」

和服を着流しの中尾さんです。井上さんと奥で密談をして、帰りかけたところです。時々、物資の取引きかなんかのことでしょうが、井上さんと密談をすることがあります。土地の顔役だそうで、頭の禿げた老人ですが、力が強そうです。

「あ、中尾さんですか。」

一同は静まりました。私は解放されました。

「若い娘をいじめたりして、みっともねえぞ。お祭りに酒が足りなかったらしいね。俺が奢ってやろう。」

頭をかいてお時儀をする者もありました。

「いえね、美枝ちゃんが倉光君をどこかに隠したというんで、糺明してたんです。」

「ばか言え。」

卓子を並べなおして、それぞれ席に就きました。ふしぎなことに井上さんまでが、中尾さんを送り出すところではありましたが、その席に腰を下してしまったのです。井上さんが土地の人と一緒に飲むなんてことは、これまでになかったのです。

「倉光君は、今日はまだ一度も来ないのかい。」

そんなことを、井上さんまでが、お島さんに尋ねています。

料理はなんにもいりません。摘み物だけで、日本酒のお燗をするだけです。