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おとこぎらい
男ぎらい
豊島 与志雄
「苦楽」1949(昭和24)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,878 字 · 18 页
」
姐さんが私の方を見て、そしてすぐ向うへ寝返りうちました。
その背中の方へ、取り縋るようにして、私ははいってゆきました。大きく息をしました。へんに眠れません。室の中ぜんたいが、厭らしく穢ならしく思われます。土間の方で、かさかさ音がします。黒犬のクマが体をかいてるのです。しっ、しっ、叱っても、まだかさかさやっています。だにか皮膚病かでしょう。あんな犬をなんで飼ってるのか、姐さんの気が知れません。ただ真黒な小さな普通の犬で、どこからか迷いこんで来たのです。泥坊よけにもなりはしないでしょう。
そのつまらないクマを、ポマードの倉光さんが特別に可愛がるから、おかしくなります。だいたいあのポマードがおかしいのです。長い髪をバックにして、ポマードをこてこてぬりたて、靴先よりももっと光らしています。女の日本髪に鬢附油を用いることはありますが、それだって、あんなにぴかぴか光らしはしません。油が浮いて流れるように光っていて、どうかすると白く埃がくっついてることもあります。却って不潔です。その上ポマードの臭いと犬の臭いと一緒になると、とてもいやなものになります。倉光さんはいつでも、クマを撫でさすり膝に抱きあげることさえあります。