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いしつしょうくばいさよう

異質触媒作用

寺田 寅彦

「文芸」1933(昭和8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,360 字 · 13 页

青空文庫

鉄球をころがしているお客も、見物している人達も、番をしている商人も一処になって時々笑い出す。天下泰平の趣がある。ヨーヨーの緊張時代のあとにコリントゲームの弛緩時代がめぐって来たものと見える。

三原山投身者もこの頃減ったそうである。

三 へリオトロープ

よく晴れた秋の日の午後室町三越前で電車を待っていた。右手の方の空間で何かキラキラ光るものがあると思ってよく見ると、日本橋の南東側の河岸に聳え立つあるビルディングの壁面を方一尺くらいの光の板があちらこちらと這い廻っている。それが一階の右の方の窓を照らすかと思っていると急に七階の左の方へ飛んで行く。そうかと思うと、ゆらゆらとゆれ動きながら三階の窓を片端から順々に照らして行くのである。誰か旧魚河岸の方の側で手鏡を日光に曝らしてそれで反射された光束を対岸のビルディングに向けて一人で嬉しがっているものと思われた。こういういたずらがいかに面白いものであるかはそれを経験したもののよく知るところである。小学や中学時代に校舎の二階の窓から向う側の建物の教場を照らして叱られた人も少なくないであろう。このいたずらの面白味は「光束」