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たたまれたまち

畳まれた町

国枝 史郎

「サンデー毎日」1927(昭和2)年7月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,340 字 · 7 页

青空文庫

一

一

ボーン! 音だ! ピストルの音だ! ……と、そんなように思われた。

で探偵が走って来た。

町は相当賑かであった。

電車が五ツ通っていた。家根は黒く車体は緑で、そうして柱はピンク色であった。車輪が黄金色で車道は青い。だが何うしたというのだろう。客が一人も乗っていないではないか。自動車が九ツ流れていた。その中の一つは貨物自動車で、黄色い荷物をのっけている。

往来の左側にビルディングがあるがあまりに色の強い化粧煉瓦で、胴体のあたりを飾っているので、どっちかというとあくど過ぎた。

そのうしろにもビルディングがある。これは木製で茶色である。

そのうしろの遥かなたに、匂うような薄緑の大ビルディングが、町を圧して聳えていたが、その高さは五層楼で、窓が無数に眼を開けていた。だがそれにしてもその窓々が、薄紅く見えるのはなぜだろう? 時計台が頂きにある。カーン、カーンと二ツ打った。今は午後の二時と見える。

その大ビルディングの少し手前に、事務所めいた家が立っていた。家根がセピア色に見えるのは、銅でも張ってあるのだろうか? いやいや断じてそんなことはない。そんな高尚な建物ではない。