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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

危険だからネ」そういって彼はピストルで敵を撃つ真似をした。

私は電灯を静かに横へ動かした。部屋には階下同様、大きな硝子壜だの、樽だのが並んでいた。しかし階下には無かった変な器械が一隅を占領していた。それは古い化学工業の原書にあるようなレトルトだの、耐酸性の甕だの、奇妙に曲げられた古い硝子管だのが、大小高低を異にした架台にとりつけられていたのだった。

(さてはこの建物は、強酸工場と倉庫とを兼ねているんだな)

と私は気がついた。これは横浜へ明治年間に来た西洋人が、その頃日本に珍らしくて且つ高価だった硫酸や硝酸などを生産して儲けたことがあるが、それに刺戟せられて、雨後の筍のように出来た強酸工場の名残なのだ。恐らく震災で一度潰れたのを、また復活させてみたが、思わしくないので、そのまま蜘蛛の棲家に委ねてしまったものだろう。それにしても……。

と、突然に、後方にガタンと樽の倒れる音がした。ハッと振りかえる間も遅く、飛び出した黒い影が飛鳥のように階段を駈け下りた。

「待てッ」

折井刑事は叫び声をあげるが早いか、怪影を追跡して、階段の下り口へ突進した。そして転がるように、駈け下りた。