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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

と壮平爺さんは眼をショボショボさせて云った。「あんたに巡りあわなければ、今頃わしゃ首をくくっていたかも知れん。あのカンカン寅が、人殺しの嫌疑でお上に捕ったと聞いたときは、どうしてわしゃ、こうも運が悪いのかと、力もなにも一度に抜けてしまってのう」

カンカン寅というのは例の仙太の親分に当る男で、昨夜あの海岸通の古建物で、折井山城の二刑事に捕った怪漢のことだった。彼は始め階上に潜んでいたが、私たちをうまくやり過ごしたところで階段を下りて逃げだしたが、出口に頑張っていた山城刑事に退路を絶たれ、逡ろぐところを追いすがった折井刑事に組みつかれ、そこで大乱闘の結果、とうとう縛についたというわけだった。二人の刑事は、案の定大手柄を立てたことになった。その悦びのあまり、一旦不審を掛けた私だったが、何事もなく離してくれたのだった。

しかし捕えたカンカン寅というギャングの顔役は、当局の訊問に対して、思うような自白をしなかった。彼の手先である赤ブイの仙太殺しの一件を追求しても、首を横に振るばかりか、例の証拠をさしつけても一向恐れ入らなかった。かねがね手強い悪党だとは考えていたが、あまりにもひどく否定しつづけるので、係官もすこし疑問を持つようになったと、きょう折井刑事が不満そうに語ったことだった。