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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

顔色を変えてカンカン寅の留守宅へ行って、いままでの事情を話すと共に、この際是非に融通を頼むと歎願をした。しかし留守を預る人達は、老人の話を鼻であしらって追いかえした。親分がこんなになっていて、そんなことが聞かれると思うか、いい年をしやがってという挨拶だった。

心臓が停まるほど驚いた壮平爺さんは、泣く泣く我が家へ帰っていった。路々、この上は娘に事情を云って新しい借金を負わせるか、さもなければ首をくくろうかといずれにしても悲壮な肚を決めかけていたところへ、私が背後から声をかけたのだった。爺さんとは、私が少年時代からの知り合いの仲だった。――と、まアこういう訳だった。

「じゃあ爺さん。私がカンカン寅に代って、あれを千円で譲りうけようと思うが、どうだネ」

と、事情を訊いた私は、相談を持ちかけた。

「えッ。あんたが、代って千円を」爺さんは目を瞠って云った。

「文句がなければ、金はいまでも渡そう」

「そうけえ。済まないが、そうして貰うと……」

「ホラ、千円だア。調べてみな」

私は人気のない室に安心して、千円の紙幣束を壮平に手渡した。その千円は、実を云えば銀座を出るとき、仲間から餞別に贈られた云わば友達の血や肉のように尊い金であったけれど、老人はワナワナ慄える手に、それを受取った。