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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

私は軽く突っぱねた。時計をソッと見ると、既にもう十一時に間がない。私は気が気でない。

「いやに逃げるじゃないか」と執念深い刑事は反って絡みついてきた。「ところで一つ尋ねるが、赤ブイ仙太を見懸けなかったか」

「仙太がどうかしたんですか」

「余計なことを訊くな。貴様、仙太と何処で逢った。何時のことだ」

「旦那方。私はハマの仙太の番をするくらいなら、今時こんな場所を一人で歩いちゃいませんぜ」と私はちょっと嘘をついた。

「ふざけるな。じゃあ訊くが、銀座無宿の坊ちゃんが河岸をかえて、なぜ横浜くんだりまで来ているのだ……」

坊ちゃん政――それは私にいつの間にか付けられた通り名だった。もちろんかねて顔馴染の二刑事が覚えているのも詮ないことだろう。だが云わでもその名前を呼びかけられりゃ、いくら此処は横浜だって小さくなっていられるものかと、私はムッとした。

だがそのムッとするのが、私の悪い病気なのだ。現に銀座を出て、単身この横浜に流れて来たのも、所詮は大きいムッとするものを感じたせいではなかったか。

(伝統の銀座を、横浜の奴等に荒されてたまるものかい)

若い私には無体にそいつが癪にさわった。