轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くじょしょうろく

痀女抄録

矢田 津世子

「改造」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,578 字 · 65 页

青空文庫

龍子のことを、この男は「先生」と呼んでいるが、弟子たちの口真似をしているというよりも、これには揶揄の調子が含まれていた。

中尾通章は音楽雑誌の記者くずれで、いまは「便利屋」のようなことをやっている。つまり、人の使い走りをしたり、ブローカーのようなことをしたり、音楽会の世話をやいたりしているうちに、いつしか「おっと、これは便利だ」型の男になり澄ましていた。

人の私生活の鍵をまかされる場合が多いから、この男は、心得顔に土足で何処へでも入り込む。それを自身に与えられた当然の役得としているし、まかせた人々は「困った奴だ」と愚痴をいいながらも諦めて、それを大眼にみていた。

さるピアニストが或るピアノ調律師へ金を融通したところが、期日をすぎても返さぬばかりか、日を重ねるにつれてだんだん埒があかなくなり、そのうち行方さえ晦ましてしまった。引きうけた中尾通章は、どう探し出したか、程なくその調律師から貸金の全部を取り立ててきたという。そのピアニストから龍子はきかされたことがあった。

また、或る時、龍子にあらぬ噂が立って、それが三流新聞の娯楽面いっぱいに事々しく掲げられたことがあった。