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くじょしょうろく

痀女抄録

矢田 津世子

「改造」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,578 字 · 65 页

青空文庫

金の話し合いになると、この男は、言葉つきまで改たまる。

二人は、算盤をはじいたりしながら、しばらく、貸金の話しをした。

日がすぎて、龍子は、弟子たちの前で折りにふれ寿女の遺品のことを話した。自分に遺されたものの貧しさを話した。弟子たちは、あんなに目をかけていた先生のところに、遺品の無いのはお気の毒だと話しあった。そして、いつか贈られた刺繍のスリッパや半襟やクッションなどを、それぞれ龍子の手に返した。

寿女さんの百ヶ日がきて、わたくしは、加福の師匠宅のささやかな法要の席につらなった。

師匠のはからいで、この集りは、寿女さんの数寄屋町在住の折りの繍によって結ばれた縁故にたよって、葛岡連之助氏、それに、銀三、俊男、この少年は、寿女さんが師匠の許をひく数日前に弟子入りしたのだから、もう五年余りからになる。それと新顔の彦松という年少の内弟子と、わたくしの、都合六人の集りであった。

読経が終わって、食事を済ませると、やがて、坊さんは帰って行った。座にはだんだん寛ぎが出て、お茶にうつる頃から、どうやら話もはずんできた。

「葛岡さん、この頃は学校のほうにも教えておいでのようですが、ずいぶんとお忙しいでしょうな」