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しろいあさ

白い朝

豊島 与志雄

――「正夫の童話」――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,920 字 · 35 页

青空文庫

そうした梗概が、甚だあやしげなものでありますと同様に、秘書の役目も、甚だあぶなっかしいものですが、芝田さんはそれで満足しているようです。男の書生も一人いるのですが、芝田さんの言葉をかりますと、秘書的な役目を忠実に従順に果す者は、女に限るのだそうです。

「金子さんが就職なすったら、あのお母さん、どんなにかお喜びなさるでしょう。」

そう云って駒井さんは、心で自分の境遇を味ってるのでしょうか、空虚な眼付で、でもしみじみと、正夫の顔を見ていましたが、ふと、にっこり笑いました。

「そうそう、今日はあなたに御馳走してあげるわ、ね。」

食卓の上には、正夫が眼をまるくしたほど、いろいろ御馳走がならんでいます。鮎の塩焼や、赤い刺身や、白い水貝などは、殊に目をひきます。ただ、違い棚の上には、大きな果物籠がのっていて、それは包み紙のまま、そっとしてあります。その代り、葡萄酒の瓶が出ています。

芝田さんが不在の折に、そんなことは珍らしいのです。

「おじさんは、まだかしら。」と正夫はへんに落着かず、云いました。

「どこかで、食べていらっしゃるんでしょう。」と駒井さんは云いました。