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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
印刷工場で、団体見学の女学生などにみられるときもはずかしかったが、竹細工はもっとはずかしかった。何せみられる方が一人ぽっちであった。いい若いもんが手内職みたいな仕事をしているということもあった。しかし、それがどうして悪いのだろう? 何でこんなにはずかしいのだろう? そしてやっぱり、若い女が前の道を通ると、三吉はいち早く気がついて、家のなかにとびこんだ。
「でもまァ、これでお前がひしゃくをつくれば、日に二円にはなる。たきぎはでけるし、つきあいはいらんし、工場の二円よりかよっぽどつよい」
倅が何で家の中にとびこむか、わざと知らんふりして、母親はいうのである。二円の利益は母親やきょうだいたちの手伝いもふくめてであるが、母親はなんでも倅の家出をおそれていた。
「そりゃな、東京の金はとれやすいかも知らんが、入りやすい金は出やすいもんだよ。まして月々におくるという金は、なかなかのこっちゃない」
あがりがまちのむこうには、荷馬車稼業の父親が、この春仕事さきで大怪我をしてからというもの、ねたきりでいたし、そばにはまだ乳のみ児の妹がねかしてあった。母親にすれば、倅の室の隅においている小さい本箱と、ちかごろときどき東京からくる手紙がいちばん気になるのであった。