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しろいみち

白い道

徳永 直

「新潮」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页

青空文庫

「ときに、例の方はどうしたい?」

と訊いたとき、三吉は、

「おれ、病気なんだ」

と答えたきりだった。けげんな顔をしている相手にいくら説明したところで、それは無駄だと思った。

「おれ、東京へゆく」

送別会にもでなかった高島が、福岡へ発ってしまってから、三吉は母親にそういった。

「急に、また、何でや?」

油断をつかれたように、母親はびっくりした。出発の前晩まで、母親はいろいろにくどいた。父親はだまっていたが、勿論賛成ではなかった。しかし三吉は、高島を福岡へおっかけよう、そこで紹介状をもらって、ボルの東京へゆこう、それだけを心のなかにきめていた――。

「高坂さんや深水さんにも、だまってゆくのかい?」

あきらめた母親は、末の妹をおぶって途中まで送ってきながらいった。三吉はむこうむきのままうなずいただけだった。町はずれから田甫へでて、例の土堤の上の道へでたところで、母親は足をとめた。

「どこまでいっても、おなじこったから――」

バスケット一つだけもっている三吉もふりむくと、

「こっからお江戸は三百里というからなァ――」

と、母親は、背の妹をゆすりあげていった。三吉の母親たちは、まだ東京のことを江戸といった。