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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

ゆっくり物を食べ、ゆっくり酒を飲み、余り口を利かず、大きな体躯をどっしりと落着かせていました。けれども、長い髭は力なく垂れ、顔の色はくすみ、眼はどんよりとしていました。彼の阿片嗜好はひどく昂じてるとの噂がありました。

方福山が初め、荘一清と汪紹生とを紹介しました時、彼はただ眼を二三度まばたきしただけで、二人の顔はよく見ないで、呟くようにいったのでした。

「君達のことは前から聞いていた。わしは君達を、いつも洋服を着てるものと思っていたよ。」

荘一清が曖昧な微笑を浮べて、鄭重な調子で答えました。

「私はまた、閣下はいつも軍服を召していられることと、思っておりました。」

その言葉のあと暫し時を置いてから、呂将軍は突然、はっはっはと大きな声で笑いました。

側にいた高賓如はちらと眉をひそめました。汪紹生はびっくりしたように呂将軍の顔を見上げました。呂将軍はなお得意気にも一度高笑いを繰返しました。

平服をつけてることが、呂将軍を、へんに如才ないようにまたは愚鈍なようにも見せるのでした。

食卓で、呂将軍はまた同じような高い笑いをしました。食物の話の時、彼は珍らしく言葉を続けて、嘗て太原で経験したという事柄を披露しました。