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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

――饑饉の年のことでしたが、数名の僚友と、そこの料理店で飲んでいますと、豚肉の煮込みの皿の中から、人間の足の爪が二つ三つ出て来ました。一同は酔っていましたので、その爪を興がって、酒杯に入れて乾杯したというのです。

その話のあと、ちょっと言葉がとだえました時、呂将軍ははっはっはと高笑いをしました。

すると、少し離れた席から、陳慧君の声が聞えました。

「まあ、閣下は、作り話もお上手でいらっしゃいますこと。」

呂将軍はまたはっはっはと笑いました。

陳慧君はもう、そばの方夫人に話しかけていました。

「蛸の足に、あのまるい、吸いつくものが、沢山ありますでしょう。あれだけを取って、干し固めましたものを、奥地の特別な蔓だといって、アメリカの水兵さん達に食べさしていた家が、上海にありましたよ。大変繁昌しておりました。」

方夫人はただうなずいて聞いていました。同席してる娘の方美貞は女学生風の快活さで、柳秋雲になにか囁いていました。ただ陳慧君だけが、女のなかでは一人、全席の話題の中心にも言葉を出すのでした。

陳慧君の存在は目立ちました。彼女と方福山との関係は、方夫人にも既に公然と承認されてるようでしたが、そういうことを別として、社交に馴れてる彼女の挙措応対は、その敏活な眼の動きと、血の気の少い白く澄んだ皮膚と共に、品位は乏しい